奥田英朗「ウランバーナの森」

奥田英朗のデビュー作を読んだ。
ジョン・レノンが曲を作ってなかった時期、日本の軽井沢にいたことがあるというのは有名な話だが、それを題材にしてるファンタジーである。




e0089956_1205164.jpg基本的にジョン・レノンという明確な固有名詞は登場しないフィクションなんだけど、主人公がジョンという名であることからして、作者はジョン・レノンの(に向けた?)話であることを全然隠したりしていない。
こういった、主人公の半端で曖昧なホント感が、ファンタジー感の創出に巧い具合機能してるんである。
日本のお盆という特殊な時期、軽井沢という特別な場所の絡め方といい、実際のジョン・レノンにまつわる事実との辻褄あわせといい、いやホントに巧い、そして面白く楽しい。

作者のジョン・レノンに対する限りない愛に満ちた想像力のおかげで、最後のアルバム『ダブルファンタジー』が生まれる(音楽活動再開の)きっかけ話としても(あり得ない作り話なんだけど)、違和感なくスゥーッと入ってくる、、
きっとジョン・レノンは、この物語のような出来事はないにしても、この主人公のような精神の浄化を、その時期に経験したんだろうなって、、

にしても、、、リアリティ描写の積み重ねでジェットコースター・サスペンスを創り上げてく「最悪」とか「邪魔」とは全く違ったアプローチで、やさしくあったかい超常現象モノまでやれるとは、奥田英朗って人の筆力には驚きますわい(しかもこれがデビューだなんて、、)、、
おいら、「ビューティフル・ボーイ」(話の中ではその曲と分かる婉曲表現だけど)が生まれた瞬間の描写なんて、涙滲みましたもん、、、この本て、ある意味、奥田英朗からジョン・レノンに向けたラブレターなんだろうなぁ、、

まぁビートルズファンや音楽ファンでなくても、かなり愛しく思えるファンタジーの小品には違いあるまい。
意識した訳じゃないけど、先日読んだ太一先生の本といい、幽霊モノのエエ話に連続して当たって嬉しいぞ、おいらは
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by cinema-stadium | 2006-02-08 01:26 | Comments(0)